お金に代わる高級品だった!?韓国伝統結び・매듭(メドゥプ)を紹介します。

韓国伝統結び・매듭(メドゥプ)の師範、まりのすです。

メドゥプに興味があってこの記事をお読みの方もおられれば、「メドゥプ?なんじゃそりゃ」な方もおられると思います。

知っているようで知らない韓国の伝統文化、メドゥプ。師範として、少しでも多くの方にメドゥプの魅力を知ってもらいたく、こうして記事を書いております。

今回はそもそもメドゥプって何なのか、皆さんに知ってもらおうと思います。

まりのす
まりのす

これを読めば、あなたも明日から「韓国のメドゥプってね、」なんて誰かに伝えたくなるでしょう。

メドゥプという名前の意味

メドゥプは韓国語で「매듭」と書きます。

「매듭」という単語自体は結び、結び目という意味で、靴紐の結び目のことも대듭、物事を締めくくることを「매듭을 짓다(結びめをつくる=締めくくる)」というふうにも使います。

中東発祥のマクラメのような、紐を結んで作られるものはメドゥプ作品とされ、今回私が紹介する韓国の伝統工芸品であるメドゥプは「전통매듭(伝統結び)」と呼ばれます。

まりのす
まりのす

日本ではメドゥプと呼ばれることが多いですが、メドゥプと書くだけでは初めての方には伝わりにくいので、私はいつも「韓国伝統結び」と前につけています。

結びひとつひとつがメドゥプ、メドゥプで作った小さな飾りをノリゲと言います

韓国人の生活に溶け込んだメドゥプ、その価値

メドゥプは규방공예(閨房工芸)と言われる韓国伝統工芸品のひとつです。
규방공예(閨房工芸)とは、厳格な儒教社会であった朝鮮時代に、社会的活動が制限された両班家の女性たちが、主な生活空間であった閨房で作っていた手芸ジャンルです。

メドゥプを使用した代表的なもので、現代でも一番目にすることが多いものといえば、韓服の装飾につける노리개 (ノリゲ)
化学繊維なんてものがない時代、人の手で養蚕から製糸まで行っていた時代には、糸や糸から作られる紐も布もとても貴重でした。そのため朝鮮時代には、ノリゲはその大きさや数などで身分・階級を表す富の象徴でもあり、お金の代わりにも使用されることもありました。

3つのノリゲがあわさった三作ノリゲは王妃などの宮中の位の高い女性だけが身につけることができたそうです
韓国ドラマに見るノリゲの価値

朝鮮時代を描いたドラマでもその様子が伺えます。イ・ビョンホン、キム・テリ主演の미스터션샤인(ミスター・サンシャイン)の1話では、幼いユジンをかばう母親が、両班貴族のノリゲを持って逃げるように促すシーンがあります。それで数日は食いつなぐことができる価値があるからです。
2PMのジュノが主演を努めた옷소매 붉은 끝동(赤い袖先)でもノリゲと身分を比較するシーンが何度が登場します。他にも多くの歴史ドラマ、映画でノリゲが登場するシーンが多々見られるので、ぜひチェックしてみてください。

ミスター・サンシャインは韓服のデザインもとても素敵なのでおすすめ!

ノリゲの他にも、朝鮮時代の身分証であった호패(戸牌)や巾着などにもついていたり、窓にかかっている簾をかけておく발걸이(すだれかけ)など、メドゥプは韓国の生活の至るところに溶け込んでいました。

韓国の伝統結び・メドゥプの特徴

アジアの結びの起源は中国ですが、文化がそうであるように、長い年月をかけて地域ごとの特色を持つようになりました。

見た目の特徴は、中国は赤色をメインに、大きく、とても派手なイメージがあり、日本の結びは小さく、シンプルなかわいさ。韓国はちょうどその間の、優雅さがあるとも言われます。

技法で見ると、メドゥプには5つの特徴があるとされています。

1. 上から下まで1本の紐で構成

これは孔雀結び、紐を半分にして結んでいるので、解くと1本の紐に戻ります

韓国の結びは基本的に1本の紐で作ります。
長い紐を半分にして結びはじめ、順番に、規則通りに締めることで形を整えます。

途中で別の紐で装飾をしたり房は別でつけたりしますが、本体となる紐は1本なので、ほどくとまた1本の紐に戻ります。

2. 中心から始まり、中心で終わる

どんなに複雑な結びでも、全ての結びは中心に始まり、中心で終わります。

最初はわかりやすいように色の異なる紐を使って練習します

3. 上下左右が対称で、裏表が同じ

全ての結びは結び終えると左右対称になっていて、裏表も同じ形の、対称的な美しさをもっています。

まりのす
まりのす

形は同じでも、実は裏表の区別があります。紐が重なる部分が人の字になっている方が表。

気にする人(私)は気にする裏表

4. 草花や生き物、縁起物を表した工芸品

韓国で伝承されてきた結びの基本形は30種類ほどあり、その名前は地域によって異なるものもあります。すべて普段から使用する物品や、花、昆虫などを表していて、メドゥプが人々の生活と密接だったことが伺えます。

蝶々、蜂、菊の花など、それぞれ成長や繁栄などの意味も持っています

5. 人の手から手へと受け継がれる技法

メドゥプの結び方は複雑で、文章で書き表すことが難しいため、文献にはあまり残っていないそうです。見た目から結び方を学ぶことも難しく、人の手から手へと伝え受け継がれてきました

メドゥプの今とこれから

近代化に伴い、韓国人の生活からもどんどんメドゥプは消えてしまいました。
今は韓服を着る機会がなければほとんど見ることはなく、たまにドラマなどで出てくると、「祖父母の代から続く古い家」の象徴のように飾られていることが多いです。

しかし最近ではコロナ19の影響で家にいる時間が増え、趣味で学び始める人が少し増えてきました(私もそのひとり)。オンライン講義や文化施設での体験教室もあったりと、韓国伝統文化としての存在感はまだまだ失っていません。

また朝鮮時代とは異なり、材料の大量生産が可能で安価に手に入りやすくなった今、より複雑で自由な創作が可能になりました。

伝統の姿を受け継ぐのはもちろん大切ですが、メドゥプがより多くの人に知ってもらい、伝統文化として生き残るためには、さらなる進化と発展も必要だと思っています。

まりのす
まりのす

これから指導師範として、技法の伝承だけでなく、文化発展にも寄与できる作品作りに挑戦していきたいです。がんばりまーす😊